お題6 羊皮紙の表紙の詩集

えむさん ジャイロ+ジョニィ



所要時間:2.5時間

コラボ アムロさん ジャイロ+ジョニィ

  本国だけに留まらず今や世界的人気を博したかの有名探偵小説を、ジャイロは知らないと言った。彼は本は読むけれど、常にリアルから目を逸らすことを許されないところで日々の生活を送っていたので、フィクションなどという絵空事を嫌う傾向にあるようだ。そういうのを読まず嫌いだというんだよとジョニィは言ってみたが、彼はそんなジョニィを見下すような笑みを浮かべて「探偵小説なんざガキが読むもんだから尚更興味ねーな」と取り合わない。ムッと眉を吊り上げたジョニィが声に出して明確な怒りを訴えなかったのは、怒りを露にすることによって彼からやはり子供だという烙印を押されることを危惧したのと、もう一つはその癪に触るような笑い方が、渦中の探偵にそっくりだと思ったからである。
  ジョニィは何を言うよりも、実際読み聞かせる方がこの小説の面白さを伝える何よりの近道だと思い、幸運なことに偶然所持していた一冊の本を荷物から引っ張り出した。この探偵に傾倒したのは割りと最近だが、それからというものジョニィは少し遠出する際にはこのシリーズが手放せなくなってしまった。余りに持ち歩く頻度が高いため、上等の渋い羊皮紙の表紙は擦れて破れかけている。その表紙を一撫でしてから、ジョニィはジャイロに手招きして呼び付けた。応えた彼はまだ日が昇ったばかりからの口論にも眠気が取れた様子にはなく、朝露に濡れた草葉の上を這ってジョニィの元へとやって来たのだ。
  「今から読んで聞かせてあげるから」
  そうジョニィがまるで内緒を打ち明けるように言うと、彼はあからさまに眉根を寄せた後「よりにもよってこんな気持ちの良い朝っぱらから探偵小説かよ」とどうにも乗り気ではない様子。しかし一向に構わないジョニィがタイトルから朗々と読み上げると、彼は観念したのか仰向けに姿勢を変えて寝転がった。そして突然木に凭れ掛かって座っているジョニィの膝へとその頭を落としてきたのである。
  「いいぜ、聞いてやる。でもこれが条件だ」
  言うだけ言ってすっと目を閉じたジャイロに、驚き固まってしまったジョニィは何の反応もできないままだった。本の間から見下ろすジャイロは、憎らしいくらい涼やかでそして心なしか楽しそうな顔をしている。こんな位置から彼を見下ろすことなんて当然今までにはなかったことだから、ジョニィは手に持つ本の重みも忘れ、かの探偵から享受した推理の原点である観察なぞを始めてしまった。しかし読んで聞かせると宣言したジョニィの声がタイトルを読み上げたきり続かないことに焦れたのか、ジャイロが「まだ始まらないのか?」と目を閉じたまま顎を上げた。それとも読めないスペルでもあるのか?と悪戯に彼が笑ったので、ジョニィはやっとのこと本へと視線を返したのだ。
  この晴れやかで健全な朝に、男に膝枕をしながら探偵小説を朗読する。そのうちにこれが如何に奇妙な構図であるかをジョニィは実感し始めた。そうすると朗読の最中ながらもどうしても我慢できず声を震わせて笑い始めたのだった。
  佳境に向かう本の中では、相変わらず件の探偵先生の推理が冴え渡ってナイフの如き凛冽さである。空には瞬間を留めて切り抜きたいほどの美しい青に白い雲が流れ、神が創ったという光が木々の葉を青々と照らし付けていた。まるでこの出来過ぎた光景こそが幾編の詩集のようではないかと、ジョニィはくすぐったく思ったのである。

5/3 22:24〜23:00


りんぽんさん 砂男←ディエゴ




所要時間 約4時間



榎本さん ジャイロ&ジョニィ




5/5 6:00前-35分



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