アメリカ大陸を馬で横断するスティール・ボール・ラン・レースは、どの参加者が優勝するかという賭けも行われていた。長距離のレースは短距離走とは勝手が違うといえど、馬を走らせることに対して専門のジョッキーも参加しており、当然彼らには賭けの人気も集中した。
イギリス競馬界からは、天才ジョッキーと認められているディエゴ・ブランドーが、一方アメリカからは、実力者だったが半身不随の事故で引退を余儀なくされたはずの、ジョニィ・ジョースターが障害を克服して参加し、賭けに興じる者達の間で、この二人はライバルと位置づけられていた。
実際は、ディエゴは誰か一人を特別意識してレースに参加したりはしていなかったし、ジョニィはディエゴのことをものすごく嫌っていたのだが。
さてレースは、第四ステージに突入している。遺体の右眼が映す文字から、ジャイロが次の遺体の在処を読み取ると、ディエゴに持って行かれた左眼を思い出したジョニィが叫んだ。
ジョニィ:「あいつの『左眼』でも、この事に気付くだろうかッ!!」
ジャイロ:「気付いてるって考えた方がいいぜ!」
そう答えながらジャイロは、協力関係を結んで以降ジョニィの口から、ディエゴの名が語られる回数が他の参加者よりも多いことに気がついた。
ジャイロ:「………おまえさんさあ、ジョッキーだったんだよな。」
ジョニィ:「いきなり、何?」
ジャイロ:「俺には職業上のライバルなんて想像つかないんだがよ、やっぱりディエゴのこと好敵手だとか意識してるのか?」
ジョニィ:「あいつのことなんか、考えたくもないよ。知らない。」
ジャイロは「そうか」とつぶやいて、話題を変えようとしたのだが。
ジョニィ:「君こそ、あいつのライバルだろ。」
ジャイロ:「あん? 俺はジョッキーなんか…」
ジョニィ:「そっちじゃあないよ、右眼と左眼だよ。」
ああごもっともなるほどな、上手いこと言うな…とジャイロが答えようとした刹那。ジャイロは大音声をあげた。
ジャイロ:「左眼、だとぉ!!」
ジョニィ:「どうしたんだよ?」
ジャイロ:「あれか、俺の右眼はあんなんだが、左眼は俺のと違って可愛いのか? おまえのみたいに可愛いのか? どれぐらい可愛いんだ? 見せろって言ったら見せてくれるか…」
ジョニィ:「落ち着けよジャイロ!! あいつの像は、君の右眼の像の左半分だから、君と同じだぜ!」
ジョニィに指摘されて、左眼のスタンドの像を思い出したジャイロは、心底ほっとした表情で胸をなで下ろした。ジョニィは、自分の左腕の像が右眼の像だったらいっそ、のどけからまし……と呆れるほかなかった。
所要時間:5/3 18:20-19:00 |