好きも嫌いも、愛してるも憎らしいも、ホントは全部、一緒のコトバ。
だから僕は彼に言う。
「君の事なんて、本当は何とも思ってないんだよ」
コレっぽっちもね、と自分の右手の、親指と人差し指で軽い円を作って笑いながら、彼に良く見える様にその手を掲げる。
その間は、ほんの数ミリと空いていない。
しかしぼくが話しかけた当人からは、突然の物言いに怪訝そうに眉を軽くひそめるだけで、特に芳しい反応は得られなかった。
その表情には、当惑と呆れが絶妙に混在している。
その反応も当然だ。何故なら、ぼくらはこの関係をカテゴリに分類したら「恋人同士」になるような間柄で。
そもそも、つい数分前までぼくは彼の腕の中に居て、それこそ恋人らしくキスの一つや二つもした後で。
それこそ恋人らしく、お互いの肌の感触を覚えてしまっている程の仲でもある。
そんな中で何の前触れも無く突然、ぼくはさっきの台詞を言い出した。
ジャイロはといえば、突然何を言ってんだと、しかし声には出さずに態度で語っていた。
そんな彼に、ぼくは拗ねた様な声で再び話しかける。
「ねぇ、ジャイロ聞いてる?聞いてるんなら、返事くらいしてよね。ぼくは返事の無いヌイグルミに話しかけるような人間じゃないんだからさ」
「あーあー、聞いてるってよ〜。で、一体何だってんだよ」
ジャイロは、半ば投げやり気味といった調子の返事を返す。しかしそんな彼の様子を、ぼくは意にも介さずに自分の中で用意されていた台詞を口に出す。
「だって、君に好きだとか愛してるとか、そんな当たり前の事を言ったってつまらないだろう?」
つまらなくて結構だ、とジャイロの目は口よりも饒舌に語っている。
「だからと言って、嫌いだの憎らしいだの言ったって、捻りがないじゃあないか」
無くて結構だ、とも言っているようだ。
しかし、そんな目線は意に介さず、ぼくは言葉を出し続ける。
「そもそも、好きも嫌いも、愛してるも憎らしいも、大元は全部一緒じゃあないかと思うんだよ」
そこにあるのは、全ては「執着」の感情だと、どこぞの偉い大学教授の講釈の様に解説をする。
「それで、さっきの台詞ってワケか?」
どう?とジャイロに尋ねるも、ジャイロはというともう、顔の殆どは「呆れ」で構成されているように見えた。
「……つーか、お前もっともらしく言ってるけどよぉ〜。単に俺をからかおうとしただけだろう」
「あ、バレた?」
意外と鋭いねー、と悪びれも無くぼくは最初から変わらない笑顔で言う。
対照的にジャイロは、ウンザリしたような表情で息を吐き出す。
「流石に、そう何度もお前の手にゃあ乗らないっつーの」
つまり、何度かは乗った訳だけど。
「ちぇっ、最近のジャイロはつまらないね」
つまらなくて結構だ、と相変わらず雄弁な目が語っている。
だけど、言った言葉の全てが嘘じゃあないけどね。
好きも嫌いも、愛してるも憎らしいも、どんなコトバも君に言うのだったら全てが一緒なのは本当なんだよ。
君にいうのだったら、それは全てが愛の言葉。
だから僕は、どんな言葉も笑って言うのさ。
その事を、彼が知るも知らないも、信じるも信じないもぼくの知った事じゃあ無いけどね。
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走行1時間半。 |