第二ステージの舞台、アリゾナ。見渡す限り、砂しかない場所。そう、僕らは砂漠にいる。
こんなにも日光が眩しいものだなんて、感じたことは今までなかった。僕の帽子はツバがないから、瞳に光がもろに飛び込んでくる。
隣で「ファ、カルド」と、訳のわからない呪文のような言葉を繰り返しているジャイロの帽子は、所々穴が開いているからあれも光の遮断役にはなっていないだろう。ジャイロは変だと言っていたが、優勝候補と噂されているマウンテン・ティムの被っていたような帽子だったら、ほんのわずかでも目元に陰を作ることができるのに、と思った。
眩しいだけでなく、日差しも強くてとても熱い。腕など露出している部分は、日焼けを通り越して火傷していやしないかと思うほど、ヒリヒリする。呼吸した時に喉を通る空気も熱いし、文句なしに砂も熱いんだろうな。愛馬たちの足が可哀想だと思うが、どうにもしてやれない。
そしてとにかく日陰がない。たまにサボテンが群生していると、申し訳程度にはあったりするが。大きめの岩を見つけた時など狂喜乱舞で、どちらが先に日陰を征するかで、ジャイロと小競り合いをしたりする。体が完全に隠れるような日陰に入れると、ひとまず熱から避難できるので一息つける。
面白いと思ったのは、風だ。日光に照りつけられながら疾走している時には、多少生温かくとも風はそこそこ心地よいのに、日陰に隠れている時に風が吹きつけると、まるでそれまでの暑さが嘘のように寒さすら感じてしまうのだ。
さらに信じられないのは、日が昇り、太陽が空を支配している間は地獄のような暑さなのに、日が沈んで夜の帳が降りると、一気に気温が下がることだ。昼間に暑さで汗を流し、夜には寒さでガチガチ震える。とても信じられることではない。でも、僕たちはそんな所にいる。
夜になると、ジャイロの呪文が少し変わる。とても忌々しい表情で、「ファ、フレッド!」と言い切る。気になったので訊いてみたところ、ジャイロはそれらの呪文をつぶやいていた意識がなかったようで、とても驚かれた。すなわち呪文とは、ジャイロの母国語で「暑い」「寒い」という言葉だったのだ。ジャイロは僕と出会った時からずっと英語で喋っているが、無意識の言葉とかとっさの時にはやはり母国語が出るようだ。
昼間にあれだけ太陽の熱を取り込んだ砂が、夜も熱さを維持してくれればどれだけありがたいか、と何度思ったことだろう。夜にあれほど冷めた砂が、昼間もその冷たさを保ってくれていたらどんなにか救われたことか、と何度夢見たことだろう。
ジャイロと僕は、熱砂に凍えながら砂漠にいる。
〔所要時間:30分〕 |