お題18 まだいいって言ってないのに…!

アニスさん ジャイロ+女性

(→15「宝物」の続き)
  第三ステージゴール後、湖に飛び込んだジャイロは、着替えるためにレース参加者待機用に設けられた宿へ向かった。
  「畜生、この服が乾くまで、しばらく別の服だな」などとジャイロが悪態をつきながらジョニィと歩いていると、一人の女性が近づいてきた。決して地味とは言えない服に、塗りたくった濃い化粧の出で立ちは、女性の職業を察するに有り余った。
  「ねえお兄さん、そんなにずぶ濡れじゃ、どうせシャワー浴びるんでしょ? 記念にどう?」
  一体何の記念なんだろう、と幾分冷めた目で女性を見つめていたジョニィは、ジャイロの採った行動に驚いた。ジャイロは女性に近づくと、耳打ちで何やら話しかけたのである。怪訝な顔をしながら「ただじゃ嫌だよ」と言い放つ女性をなだめすかすように、ジャイロが「もちろん。金はあるんだ、見合った分は払うよ」と言うではないか! 女性は「じゃあ、すぐにあんたの部屋へ行くから」と言って、どこかへ行ってしまった。
  予想だにしない展開についていけないジョニィは、ジャイロがシャワーを浴びるために入った部屋の前の廊下に座っていた。そこへ先ほどの女性がやってきた。女性はジョニィの存在でジャイロの部屋を理解したらしく、ためらいなくジャイロの部屋へ入っていった。
  信じられない現実を前に、ジョニィはまるで舞台のお芝居を観ているようだ、と感じた。あのお堅そうなジャイロがねえ……。少年を救うために参加しているレースでねえ……。そこはかとなく初心者そうなのにねえ……。何もあんなけばい人とでなくてもいいような気もするのにねえ……。ゴール前で僕の言ったことがきつかったからかな……。ジョニィはそんなことをぐるぐる考えていた。

  女性が部屋へ入って出てくるまで、どれだけの時間が経ったのか。時間の概念も、今のジョニィにはわからなかった。が、部屋から出てきた女性は少々憤慨しており、「ちゃんと説明してるのに、下手くそ!」と吐き捨てるようにつぶやいて、去っていった。ああ、そうなんだ。ジャイロって下手くそなんだ。女性の後ろ姿を見ながら、ジョニィはそんなことを思った。
  女性が去っても、ジャイロはなかなか部屋から出てこなかった。ジャイロが女なんじゃあないんだから、いくら何でも何してるんだ? と疑問に思ったジョニィが、レースに戻りたい一心で部屋に入ると、ジャイロの絶叫が耳に飛び込んできた。
  「まだいいって言ってないのに、なんで入ってくるんだよ!!」
  ジョニィがそこで見た光景たるや、ジョニィの体中の力を全て抜き去るのに、難くなかった。化粧道具を手にしたジャイロ。ペンキ塗りの最中にペンキのついた手で触ってしまった感じで、ジャイロの頬にはおしろいか何かがついている。いやもしかしたら、自分を練習台にしたのかもしれない。
  部屋の奥にははたして、ジャイロの右目のスタンド像が鎮座していた。しかし耳のあたりにリボンがついていたり、口の辺りには幼児がクレヨンで描いたように口紅が塗ってあったりした。現場をよく見なくとも、ジャイロが自分のスタンド像に化粧を施していたことが、容易に理解できる。
  今まで自分が想像していたのとは、全然別の事柄から繰り広げられていたことを悟りつつあるジョニィが、言葉を噛みしめながら尋ねた。
  「な に し て ん の?」
  バツが悪そうにジャイロは、全て自白した。
  「服が乾くまで、時間があるだろ……。あの姐さん、ものすごく化粧濃かったじゃあないか。俺のは、おまえみたいに可愛くないんだよ。化粧したら、可愛くなるかもしれねえじゃあねーか。時間があるなら、その間に化粧できるだろ。だけど俺は、化粧品なんて持ってない。だからさっきの姐さんに少し分けてもらって、ついでにやり方を教えてもらったんだ!」
  「そ。」
  「でもなあ……俺の化粧が下手だからとかそんな理由じゃなくて、……可愛くないよなあ、俺のはよ……。」
  物悲しげな表情で自分のスタンド像を見つめるジャイロを眺めながら、今本当に泣きたいのは望まない姿にされた右目のスタンド像だろう、とジョニィは思った。

  〔所要時間:40分〕

コラボ ひばりのさん ジャイロ&ジョニィ&スタンド



5/5 所要時間 8時間


榎本さん ジョニィ

勝手に着てんじゃねーよジョニィ


5/3 9:00〜10:30



えむさん ジャイロ×ジョニィ



所要時間 4時間弱

コラボ 榎本さん ジャイロ×ジョニィ?

思えば最近、なにかひとつの食べ物を、ひとりで完全に食べきることって、あんまりなくなった
大物をしとめた日の豪華な肉料理も、何も手に入らなかった日の薄味のスープでさえも
お前ってほんとうまそうに食べるよな、としみじみ言われて
大抵一口、それですまなくて二口三口、勝手に食べられたことが一体何度あっただろう
同じもの食べてるんだから同じ味がするに決まってるだろ?
いちいち横取りするなよな、と何度言ったかわからない

いまだってほら、ジャイロが近づいてきた
同じお菓子なんか、すぐそこにあるだろ?
さっきあけたばっかりなんだから、箱の中にはまだまだたくさん入ってる
そっちを食べろよなんでいちいち僕のを取るんだよ
と思うけどもう言わない
君が欲しがるのはこの1枚だけだってわかってしまったから
いいよ君にならなんでもあげる
最後の一枚だってなんだって

僕から半分ぶんどったあまいあまいお菓子をにこにこ食べるジャイロを見ながら
でもやっぱりちょっと思う
どうせ同じ味がするのにね
なんだかなー

所要時間30分



磐井ケイさん ジャイロ+ジョニィ

日が落ちるまで砂漠地帯を駈け、じきに黄昏どきも終わろうというころになってやっと、ジャイロとジョニィは馬の足を止めた。
ジャイロに地図が読めているのかどうかはなはだ疑問ではあったのだが、この日はなんとか小さな水場にたどりつくことができた。小さいとは言っても、水筒に楽に汲めるだけの量の水が絶えず湧いていて、そしてそれだけあればジャイロとジョニィには十分だった。じつに数日ぶりに新鮮な水を口にできたせいもあって、ふたりはひさしぶりに、張りつめた糸がふとゆるむような、心地よい時間にひたることができた。

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「どっか行くのか、ジョニィ?」
上半身をいっぱいに伸ばして荷物を手繰り寄せているジョニィに、ジャイロは問いかけた。
すでに気温もだいぶ下がっているし、夜行性の獣たちが活動を始めているころでもある。どこに行くにしても遅すぎる時間帯だ。
ジョニィはこちらに顔をむけたが、すぐにばつが悪そうに目を逸らした。ほんの短い間言いよどむ。
「ああ、その……すぐ、戻るよ。ちょっと身体を拭きたいんだ。上から下まで砂まみれでさ」
「じゃあ、オレがタオル濡らしてきてやるからそこで待ってろよ」
「あ、いや、いいって! 自分でやるから!」
思いもかけない強い否定に遭って、荷物を解こうと伸ばしたジャイロの手が止まる。ジョニィはますますばつが悪そうに、一言「ごめん」と置いてから言葉を継いだ。
「……僕の脚。自分で動かすようにしてはいるんだけど、やっぱり筋肉が萎縮しちゃっててさ。あんまり見映えのいいもんじゃないし、その……見られたくないから」
「ああ……そう、か」
ジョニィが普通の身体でないことをうっかり忘れていた自分に、ジャイロは心中で舌打ちする。 
ジョニィの性格からして、彼は「ハンディを負っている人間」扱いをされるのを嫌がるだろうから、ジャイロはジョニィに対して含みのある付き合い方をしないように心掛けている。ジャイロ自身がそういう「特別扱い」に違和感を覚えてしまうからというのもある。それに、そもそも馬上にいる時のジョニィは半身不随であることなど微塵も感じさせないから、ことさら気をつける必要もなかったのだが。
――それにしても、いまのはz慮がなさすぎたか。まったく、自分としたことが……
「あー……なんか、手伝えることあるか? オレに」
「いや、ほんとにいいって、慣れてるし。先に休んでろよ。男のストリップなんか手伝ったって楽しくないだろ」
固まりかけた空気を、ジョニィはそうやって笑いながら冗談になど紛らすものだから、ジャイロもそれ以上何も言えなくなってしまう。
ジョニィはさっきまで寄りかかっていた岩の後ろへと――その方向に水の湧く小さな泉がある――荷物とともに消える。それを見送りながら、ジャイロは軽い溜息をついた。
――なんだかなあ。
五体満足な自分と、そうでない相手。ふとした瞬間に感じずにいられない両者間の溝はくっきりと明確で、その深さを自覚すると、自分は途方に暮れるしかなくなる。何かをしなければならないような気がするのに、何をしてもその場にそぐわないような気になってしまう。
それがひどくもどかしく、そして苛立たしかった。

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「ったく……」
眉間にしわを寄せたまましばらく焚き火を眺めていたジャイロだったが、そう呟くと同時にいきなり立ち上がった。巻き起こされた小さな風に、オレンジ色の炎が揺れる。
もやもやしたものを抱えていながら何も行動を起こさないのは、彼の性分にはどうも合わなかった。ジャイロは早足で砂を踏み、ジョニィが向かった岩陰へと入り込む。
「……ちょっ、ジャイロ! まだ駄目だって!」
「あーうるせえうるせえ、お前さんは黙ってろ」
案の定の反駁と抗議の眼光とを軽くいなしてから、座り込んだ姿勢のジョニィの隣にジャイロもしゃがみこむ。焚き火の明かりと晴れた夜空の月明かりとで、ジョニィの身体は意外にはっきりと見て取ることができた。
最初に会ったときに感じたとおりに、上半身は一切の無駄がそぎ落とされ、きれいな体型に鍛え上げられている。身体を拭くためにシャツを脱いでいたから、それがよけいによくわかった。
下半身に目を移す。すでにパンツは身につけてあったが、ブーツを脱いだ裸足の甲や指を軽く観察するに、ジョニィ自身が言うほど彼の脚はひどい状態ではなさそうだ、と見当がついた。
「捲くるぞ」
ジョニィの了解を得る前にパンツの裾に手をかけ、膝のあたりまで捲くり上げる。思ったとおり、車椅子で生活していたにしてはきわめて整った形をした脚が目に入る。もう動かない脚が、それでも衰えることがないようにと、よほど心を砕いているのだろう。それを女々しい未練と取ることは、ジャイロにはできなかった。

「……あんまり、見ないでくれ」
ジャイロのほうを見ないようにしながら、ジョニィがぽつりと呟く。
「恥ずかしいから。こんな、役にたたない脚」
ジャイロはそれには答えずに、自分のマントを外して砂の上に広げる。
「ジョニィ、ちょっとここにうつ伏せに横になれ。脚、マッサージしてやるから」
突然のことに目を丸くしているジョニィをなかば強引にマントに横たわらせると、ジャイロはグローブを外して泉の水で手を洗う。そして、濡れたままの手でジョニィの脚に注意深く触れると、ゆっくりと揉み解していく。
ジョニィの顔には隠しきれない困惑が滲み出ていたが、べつだん抵抗するでもなくおとなしくしている。ジャイロは淡々と手を動かしながら、同じくらい淡々と、誰に聞かせるでもなく――あの、Rの発音に独特のくせがある英語で――喋り始める。
「お前さん、馬に乗ってる時に脚をたたんでかなりきつく括ってるだろう。そうしないと脚が遊んじまって危ないし、お前さんは脚の踏ん張りもきかすことができないから、そうすること自体は別に仕方がない。だが、一日馬に乗ってそんな姿勢でいてみろ、脚の血行が阻害されてあとで面倒なことになる。ああ、お前さんの脚には感覚がないから実感が湧かないかもしれないけどな。まあとにかく、あとでしっかり解しておかないといけないんだ。見たところよくマッサージできているようだが、やっぱり一人だとどうしても不十分なところもでてくる――」
「君、医術の心得が?」
唐突に言葉を切られて、ジャイロは顔を上げた。首をねじってこちらを見上げているジョニィの目に、焚き火の炎がちらちらと映っている。
「……多少な」
「道理で。僕だけでやるよりすっきりする感じだ」
「わかるのか?」
「いや、わからないけど。そんなような気がするだけ」
なんだよ、とこぼすジャイロに小さく微笑を返してから、ジョニィは上半身を起こした。
「ありがとう、もういいよ。助かった」
言いながら、マントの砂を払ってたたむとジャイロに返す。そして傍らに脱ぎ捨ててあったシャツを拾い上げ、ジョニィは少しだけ声のトーンを落として問うてきた。
「なあ、どうして僕なんかに、こんな面倒なことをしてくれるんだ?」
まともにこちらを向いたジョニィの視線は、どこまでも真っ直ぐで、強くて、言外の言葉をそれだけですべて語ってしまうほどに雄弁だった。
ハンディを負った自分に付き合う必要なんてないのに。面倒なだけだろうし、気を遣わせているようでこちらも気疲れがする。だから他人の手を煩わすことがないように、たいていのことは自分ひとりでできるようにしているのに。それでも進んでこんな自分なんかと付き合おうとするのは、いったいなぜなのか。
ジャイロはジョニィの視線を真っ直ぐに受けたまま答える。その口元には、余裕たっぷりな笑みすら浮かべて。
「別に、深い理由はねえよ。ただ、お前さんにはできないことがあるから、オレはそれを少し手伝っているだけだ。そうだな、なんて言えばいいかな――要は、背中の痒いところに手が届かないから、手を貸してやるのと同じだ」
言い切ると、ジャイロはにょほほ、と奇妙な笑い声をたてた。それがあまりに屈託のない口調であったので、つられるようにしてジョニィも声を出して笑ってしまう。
「ふふ……君の言い分はわかった。それにしたって、変なたとえだけど」
「うるせえな。いいからもう寝ようぜ、明日も早いんだ」
ぶっきらぼうな口調で言いながら岩陰を出たジャイロだが、その手にさりげなくジョニィの荷物も持ってくれているのに気付いて、ジョニィはまた、今度は声をたてずに笑った。

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だいぶ火が弱くなった焚き火をはさんで、ジャイロとジョニィは就寝することにした。さっさと横になってしまったジャイロの背中に、ジョニィは声をかける。
「ほんとうにありがとう、ジャイロ」
ジャイロは、毛布の中で片手をあげてそれに答えた。

所要時間約6時間

コラボ まよるんさん ジャイロ+ジョニィ



5/7 22-24時


申年六夜さん ジョニィ(と、画面の外に誰か)



5月7日23:57〜24:21



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