(→アニスさんのサイトの「飢え・間奏」の続き)
第四ステージ、迷い込んだ果樹園で遭遇した強敵、リンゴォ・ロードアゲイン。
「受け身の対応者」と蔑まれて、リンゴォに相手にされないジャイロ。
ジャイロとジョニィに奇襲をかけて、引けを取らなかったホット・パンツと、
殺意ある漆黒の意志を持ったジョニィ、
決して弱くないこの二人が、リンゴォにたやすく戦闘不能にされる。
凶弾を頭部に受けて倒れるジョニィを見て、殺されたと絶望したジャイロ。
しかしそれは、致命傷を与えることのできる射程外からの攻撃。
しかも弾丸は、ジョニィの帽子についていた馬蹄の飾りにも当たっている。
ジョニィがまだ生きていると判断したジャイロの、その瞬間の精神の昂揚たるや如何。
希望は、絶望の底にある精神を勢いよく引き上げ、男に決意をさせた。
リンゴォを斃したのは、己の心から望むことを見出し、その活力でもって道を切り開いたジャイロの精神。
決闘の後。
気がついたジョニィの意識の確認に、
指を四本立てたジャイロは、とある冗談を思いつく。
─── この冗談で笑うなら、ジョニィの打ち所は相当悪いぞ。
微塵も笑わず冷めた態度をとるジョニィ、思考は至極正常だった。
ジョニィは、ジャイロが冗談を言う心境を、痛いほど理解できた。
結果として運良く生き延びることができたが、一度は命を懸けた真剣勝負をして負けているのだ。
その敗北感は、言葉にはできない。
敵とは、「聖人の遺体の回収」という目的を同じくするため、これからも出遭うし何度も衝突するだろう。
今回はかろうじて勝つことができたが、次は生き延びられるだろうか?
そんな不安がないと言ったら嘘になる。
だが同時に、絶対に誰にも「遺体」は渡さないという決意もあった。
そんな心境の中で、こんな冗談を披露する最大の理由は、なによりも二人共が無事に生き延びられたことが嬉しいからだった。
つい先ほど受けた屈辱と今後の不安を紛らわし、今この瞬間の生きの悦びと情熱を表すために必要な、
二人の間の円滑油は、こんな冗談だったのだ。
リンゴォと死闘を繰り広げた小屋を後に、愛馬で疾走しながらジャイロは思う。
(俺は、あいつを斃すつもりで攻撃して、殺さずに決着をつける自信があった。)
(殺すところまで攻撃することは簡単で、確実だ。だが、俺はそこまで悪魔に魂を売り渡しちゃあいねえ。無意味な殺生をしちまうような、安っぽい器量じゃあねえんだ、俺は。)
(なのにあいつは、わざと俺にとどめを刺させた。)
(それは、あいつの誇りだったのかもしれない。正々堂々と命を懸けた決闘の末、情けをかけられてほんのわずかでも生き延びることは、あいつにとっては侮辱でしかなかったのかもしれない。自分を打ち負かした存在にとどめを刺されること、そういう最期を迎えることはあいつの望みだったのかもしれない。)
(それがあいつの「納得」であるならば、俺がとやかく言うことではないな。俺も「納得」のために、後ろ足で一族に泥をかけるような真似してまで、国を飛び出してきちまったんだからよ……。)
リンゴォを悼む気持ちが、静かに自分の内に生じてくるのを感じたジャイロは、つぶやいた。
「時の善悪を超えひたすら己の輝ける道を突き進んだ者、死を賭けなければ生を感じられなかった者、広い広い大草原の中の小さな墓標の下、静かに眠れ。」
※〔所要時間:約6時間半〕 |