お題1 おやすみ、また明日

 

アニスさん ジャイロ+ジョニィ

第三ステージ二日目の夜。真夜中に、ジョニィはうなされた。夢の中でジョニィは、折角不思議な能力を使えるようになったのに、その媒介の役目をしているらしいミイラの左腕を奪われ、敵に襲われて窮地に立たされていた。
  助けを求めるジョニィの声は寝言となり、飛び起きたジャイロがすぐに傍らに駆け寄ってきた。単に悪夢にうなされているだけだと理解したジャイロは、ジョニィを揺り起こす。目が覚めたジョニィは、危機一髪の状態が悪夢だったことに安堵した。
  安心したジャイロが再び就寝せんと自分の寝袋の方へ移動しようとした時、ジョニィがジャイロのマントの端を掴んだ。掴んだばかりでなく、ジャイロを自分の方へ引き寄せようと引っ張った。
  ジャイロ:「なーんだジョニィ、怖くて一人で眠れないのか?」
  悪夢の中で殺されかける体験したジョニィは、必死の形相でジャイロに訴えた。
  ジョニィ:「僕がこのレースの最中に死んだら、どうなる!? 誰かに攻撃されてとかでなくて、心臓発作とかの病気でもいいけど! 一体どうなるんだ!? ジャイロはどうする!?」
  ジョニィが死の恐怖に動揺しているのに気づいたジャイロは、ジョニィの頭から背中を優しく撫でながら、穏やかに言った。
  ジャイロ:「Tempus est quaedam pars aeternitatis.(テンプス・エスト・クウァエダム・パルス・アエテルニターティス)」
  ジョニィ:「何?」
  ジャイロ:「ラテン語の格言で、『時間は、永遠のある部分だ』という意味だ。永遠という時の流れの中で、俺達が生きているのはほんのわずかな一部分でしかない。逆に言えば俺達がこの世にいなくなっても、時間は変わらず流れていくってわけだ。今日という日が過ぎ去ったら、例え誰に何が起ころうと、明日は確実にやってくる。」
  ジョニィは、ジャイロの意図がつかめないため黙って聞いている。
  ジャイロ:「仮におまえが死んじまったら、おまえはあの方の御許で永遠となる。そしておまえのことを覚えていて想い出す者にとっては、おまえは変わらず生きているのも同然だ。つまり死ってのは、ただ時間を超越するだけだぜ。何を恐れることがあるんだ?」
  ジョニィはここで、自分が一番恐れていたことが、皆から忘れ去られることだと気がついた。
  ジョニィ:「ジャイロは、僕のこと忘れないか?」
  ジャイロ:「おまえみたいな自分勝手な奴、簡単に忘れられるわけねーだろーが。それよか朝日が昇ったら、俺と会おうなジョニィ。おやすみ、また明日。」
(→17「口説き文句」に続く)

  所要時間:50分


コラボ ヴァージニアさん ジャイロ&ジョニィ



5/4 14:00〜17:00 




まよるんさん スローダンサー&ジョニィ



5/3 20:00〜21:00





村瀬さん ジョニィ



所要時間 1時間強





申年六夜さん ジョニィ



5/4 03:00〜06:45





榎本さん ジャイロ+ジョニィ



5/4 10:00〜11:30



アムロさん ジャイロ+ジョニィ

  ゴールした先の宿営所では、豪勢な食事の用意が整えられていた。質より量という大食漢たちを周囲に、ジャイロとジョニィも負けず劣らずの勢いで隣り合っている。焼いただけの動物の肉や苦い木の実、時には樹皮や葉の茎というものまでも口にしなくては生きていけない過酷なレース中では決して味わえない、煮たり焼いたり炒めたりと色々な手法で調理され味付けられた料理を目の前に差し出されれば、誰だって黙って掻き込みはじめるはずだ。隣り合って座った二人も例外ではなく、皿に山ほど積み上げた料理たちをやっつけるのに必死だったのだ。そんな訳で無言だったから、二人の耳には背後から聞こえる男たちの話が聞くつもりはないけれど流れ込んできていた。
  「俺の女は東洋の小さい国の出身なんだがよ。このレースに参加するって決めたとき、彼女が母国のロマンチックな話を教えてくれたんだ。詳しいことは忘れちまったけどよ・・・何でもその国には、ある逸話の姫君に因んでその日には習い事の願掛けをする祭があるそうだ」
  「それのどこがロマンチックなんだよ」
  「まぁ待て、聞けよ。ロマンチックなのはその逸話さ。引き離された二人の男女が、その日は一年に一度だけミルキーウェイを挟んで姿を見ることが許されるんだそうだ。だから地上にいる人々は、天の川が氾濫しないように雨が降らないことを祈るんだと。因みにこの二人はある星座から例えられていて、実際はその星座の間は約15光年離れているそうだから、幾ら天の川を挟んで会えたところで、彼の『愛してるよベイビー』が彼女に届くまでには15年もかかっちまうことになるんだよ。つまり二人の愛の言葉が往復するには30年かかるわけだ。分かるか?彼女は離れ離れになる俺たちを、この祭の逸話に例えて送り出してくれたわけさ。なぁロマンチックだろう?」
  男が内容を話し終わると、隣で聞かされていた男は「馬鹿らしい」と呆れて席を立っていったようだ。そろそろ充分腹が膨らんできたジョニィは、どんな男がこの戦場で『ロマンチック』などと何度も繰り返しているのだろうかと、振り返ってその顔を確かめてやりたくなった。さぞや色男に違いあるまい。
  しかしそんな下世話な詮索も、隣から顔見知りの給仕がワインを勧めてきたから有耶無耶になってしまった。気付けば随分と人の出入りが激しくなってきている。周囲の席の面々がめくるめく立ち変わっていく中、ジョニィの隣に座っていたジャイロまでいつの間にかいなくなっていた。そろそろ日が落ちて、どっと疲れが押し寄せてきたので、ジョニィももう今日の寝床へ帰ろうと車椅子を押し始めた。
  今夜は一人に一棟コテージの与えられた贅沢な宿営所だ。外の喧騒が届かないシンと静まり返った室内は、レースが始まって以来ずっと隣にいる相棒の存在を強く思い起こさせる。ふと突然、背中で交わされていた先程の話を思い出した。そういえば結局振り向いて男の姿を確かめず終いだった。他人の色恋事などそれこそどうでもいいが、確かに二人の男女に例えられた星座の話はなかなか興味深い。一年に一度、それも間に大きな障害を挟んでしか姿を確かめられない恋人たちの哀れさといったらどうだろう。おまけに声が届くまでに15年もかかるというのだから、そのもどかしさといえばジョニィにはとてもじゃないが計り知れない。そこまで自分は強くなれないだろうと思ったら、この地上で直ぐに言葉が交わせられる距離にあることがとても幸運なことのように感じられた。誰かと言葉を交わし、視線を交わし、指先が触れ合うことの幸せを、感じられた。
  そんな風に思いながら思考に浮かんだのは一体誰の姿だったのだろう。ぼんやりと窓から見える星空を仰いでいると突然小さく控えめなノックの音が二回聞こえてきた。直ぐに気付いたジョニィは瞬きをして扉を見遣る。窓の傍から車椅子を反転させると、誰何と問うでもなく直接扉を開けた。立っていたのはジャイロだった。何だかそんな予感がしたのだ。月を背負った彼は外壁に身体を支えるように肘を着いて、何とも表現し辛い表情をしている。照れているのか困っているのか怒っているのか・・・そんなどうにも複雑な表情だ。
  「入るかい?」
  何も切り出さないジャイロにジョニィがそう聞いて首を傾げると、彼は否と頭を左右させた。
  「・・・おやすみを、言ってなかったと思って」
  「・・・え?」
  一瞬、彼が何を言ったのか理解できなかった。しかしその複雑さが上る表情の中でも色素の薄い瞳だけがまるで今宵の月のようにとても優しくジョニィを見下ろしていたものだから、彼はジャイロもまたあの星座の逸話に何か感化されるものがあったに違いないことを悟ったのだ。
  「ああ、そうだねジャイロ」ジョニィは笑った。「おやすみ」
  「おやすみ、また明日・・・」

  5/4 23:36〜24:30

コラボ グリさん ジャイロ



5/5 3時間30分



むくげさん ジャイロ&ジョニィ



5/5 30分



りんぽんさん ディエゴ



所要時間1時間



なごハチさん ジャイロ×ジョニィ

「おやすみ」
また明日、とジャイロはぼくの額に軽く唇で触れる。いつからか、寝る前のこの行為が日常となっていた。

しかし、これから先の行為へは、見えない何かにブロックされているかのようにちっとも進まない。
それでも、いつもはここで大人しく眠りに入るぼくだけど、そろそろこのじれったい距離を壊したくて、瞼を閉じずに口を開いた。

「ねぇ、ジャイロ」
いつもの通り、すぐにぼくが寝るだろうと思って、見張りの位置に向かうジャイロの足を止める。
「あ?何だよ」
「ぼくたちって、一応「恋人同士」だよね?」
「一応」の部分についつい皮肉を響きを含ませてしまうのは、思ったよりも自分がイライラしていたのだろうと判断する。
「な、何言ってんだぁ、急によぉ〜?」
案外、色事に疎いジャイロはこういう話題も得意ではないようで、途端に歯切れが悪くなる。
それはそれで、ぼくがジャイロの好きな所でもあるけれど、今のこの状況では更にイライラするだけだ。

「ハッキリしてよね。で、ジャイロはぼくの事をどう思ってるのさ」
「あ〜、いやまぁ……、好きだけどよぉ〜」
言うには言ったものの、何ともバツが悪そうだ。

「そうだよね、ぼくもジャイロが好きだよ。これって立派な恋人同士だよね?だったら……、何でぼくに手を出さないのさ」

「……はぁ?」
たっぷり、数秒の沈黙の後のジャイロの返答にますますイライラが募る。

「好きなんだったら、それこそ普通は手の一つや二つや三つくらい出すだろう!?」
初恋の女の子じゃあるまいし!
「ちょ、ちょっと待てよジョニィ!何だってそいう理論になるんだ!」
突然の展開に、ジャイロは訳が解らないような素振りだ。しかし、そんな事はおかまいなしにぼくは、ぼくの主張をぶつける事だけに専念した。

「これだけ近くに、それこそ毎日二人っきりなんだったら、もう手を出すのが礼儀ってモンだろう!」

我ながら、無茶苦茶だと思う言葉に困惑するジャイロを尻目に、言うだけ言って少し落ち着いた思考に戻る。


本当は、ぼくに手を出さないからイライラしてた訳じゃない。
ただ、不安だったんだ。
だって、彼は男でぼくも当然男で。
手を出さないのは、本当はぼくにそんなに興味がある訳じゃあないんじゃないか、とか色々考えてしまうんだ。

(ああ、もう!気付けよ馬鹿ジャイロ)

だけど、件のジャイロときたらそんなぼくの心の内なんて、当然知らずにやや赤くなった顔を逸らし気味にしている。
そのハッキリしない姿に、ぼくは知らずに憮然とした面持ちになる。

「っだろうが……」
そんな折、相変わらず顔を逸らし気味のジャイロから声が聞こえた。しかし、あまりに小さすぎて内容が聞き取れなくて、ぶっきらぼうにぼくは聞き返した。
「なに?聞こえないよ」
一泊、ジャイロが呼吸を置く。

「……好きだったら、大切にしたいって思っちまうモンだろーが!」
殆ど、ヤケクソのような声でジャイロは言った。

「クソっ、もうどうなっても知らねぇぞっ!」
「望むところさ」

いっそ、挑戦的とも言える様な笑顔を作ってぼくは晴れやかに言ってやった。

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走行時間40分



ろじさん ジャイロ+ジョニィ



セッティング・撮影:倫(所要時間約10分) 人形作成:ろじ
ジャイロがウキウキしすぎです(汗)



Kさん ディエゴの母

今日もおまえがやってきて私に挨拶して言った。
「母さん、おやすみなさい」

いつからディエゴ、おまえを寝かしつけることができなくなったのだろう。
そう私は病に臥し、日々に疎くなっていく。
やがておまえを守ることもできなくなるだろう。

「おやすみ、また明日」
返事をすると微笑むおまえに私は心の中で語りかける。
誇り高く生きるのよ、と。



いづみさん リンゴォ・ロードアゲイン

ざくり。
スコップが固い土にめり込んでいく。穴を掘らなければ。土をかき出し、スコップを刺し込み、深く深く広げていく。
穴を掘らなければ。人が眠れるほどの深い穴を。
リンゴォは傍らの死体に目をやることはしなかった。魂が去ったあとの亡骸、もはや物体としかありえないその身体。数十分前までリンゴォと対峙し、拳銃を突きつけてきた男だ。名前は知らない。だが、自分をまた1つ男としての高みへと導いてくれた彼には『感謝している』。だからというわけではないが、こうして彼が眠る墓穴を掘るのだ。
ざくり。
だいぶ深くなってきた。この男は体格がいい方だから、もう少し広げなければならないだろう。そういえば、リンゴォはこの作業を今まで何度となくやってきた。だからだろうか、スコップを持つ手つきにもどこか慣れたものがある。
彼が一番最初に墓穴を掘ったのは、10歳のときである。忘れるはずもない、彼が男として『光輝く道』を見出したあの日のことだ。幼いリンゴォは襲ってきたある男を殺した。その男が持っていた銃で、一発頭に打ち込んだ。男はまるでマリオネットみたいにぎこちなくふらついて、血を流して倒れこんだ。幼い彼は肩で息をして、無我夢中で叫んだいたのだ。
高揚感に?決意に?それとも家族を失った悲しみに?
それはわからない。ただその暴漢は既にリンゴォの家族を殺し、リンゴォの母親も姉たちも力なく床に倒れていた。彼らは全て死体だった。ナイフ、血、殺す、殺されて、死んだ。そこらじゅうにある死!その中でリンゴォはただ一人背を伸ばしていた。彼は生きていた。頬に赤みが差し、瞳は意思に美しく光っていた。彼は深呼吸をひとつして、今までにないさわやかな気分を味わった。そうやって心音を落ち着けたあと、驚くほど冷静に行動を起こした。
リンゴォは家族のぶんの墓穴だけでなく、その暴漢の墓穴まで掘ってやった。感傷はほとんどなかった。襲ったその男の魂は最早去ってしまっていたのだし、物体である死体に対して憎しみは抱いていなかった。母親と姉と、それからいくらか離れたところに男の墓穴を掘った。枝で作られた十字架をそれぞれにつきたてた。
リンゴォの歩いてきた道にはそうやって、いくつもの生と死、それに墓標のない墓がまとわりついている。そのひとつひとつが輝ける道の糧となってくれている。その全てに彼は感謝を捧げている。もちろん、その過程で自分自身が墓穴に入ることになっても。
彼らは死んだ、しかしそれはある一種の眠りである。いつからかそう考えることにした。
心臓は止まるだろうが魂はそのままでありつづける。リンゴォと戦った者達は皆、公正な果し合いをした後に眠りについた。
死という眠り。そこに意識は入らないが。
ざくり。この一突きでようやく大きな穴が掘り終わった。
スコップをおくと、傍らの眠る男に目を移す。既に魂の去った身体、かっと見開いていた目をそっと手で伏せてやる。そうすることでいくらかおだやかな表情になる。腕をつかんで、ずるずる引きずるとさきほど掘った穴に落とした。思ったとおり、ぴったりだ。
土をかぶせるまえにリンゴォは己も目を閉じ、胸に手をあてた。十字をきることはしない。何を祈ることがあろうか。天国へいけるように?そんな慈悲を装った哀れみをもった行為は彼に失礼だ。彼は公正に闘い、そして死んでいった。俺をまたひとつ成長させてくれた。
感謝いたします。だからもう、
「おやすみ。」
風が僅かに果樹園の香りを運んできた。リンゴォはさわやかな空気を肺一杯に味わうと、土をかける作業を開始した。
まったくもってこの世界は美しい。百万倍も、美しい。

所要時間:約一時間

コラボ アムロさん リンゴォ・ロードアゲイン

考えてみれば私ほど、生というものを知っている男はありますまい。
だから私の道は光り輝き美しく、まるで果てのない荒野に続く一本道のように明確なのです。
道標すら必要ではない。

考えてみれば私ほど、死というものを知っている男はありますまい。
だから私の道は感謝に溢れ、気高く、崇高に明日を迎えられるのです。
嗚呼、素晴らしき哉、我が人生の美しさ。その潔さ、正しさを私は愛す。

  5/7 20:20〜20:27


コラボ 磐井ケイ さん リンゴォ・ロードアゲイン



所要時間約3.5時間 


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